リクルート銀座ビルで開催されている、安西水丸展へいきました。
やさしくユーモラスで温かみのあるデザインは、よく雑誌などでみていましたが、今年の3月に天国へ旅立っていたとは知らず、びっくりしました。
イラストレーション、雑誌、漫画、小説、エッセイ、絵本など、幅広い層から愛されていた水丸ワールドを鑑賞し、深い感銘をうけました。
イラストレーターとしてデビューする前は、15年間会社員(電通、平凡社など)として働いていたそうです。
”どんなにつまらないなと思う人でも付き合って話したりします。
それを学ばせてくれたのは会社なんです。
会社で働いているとこんな嫌な奴がいるのかという人に会う。
でも共に仕事をすることで色々気づくこともあるんです。
会社にいたことは、すごく勉強になりましたね。” と語っています。
私も13年間会社員でしたので、とてもよくわかります。。
今でも勉強ですが、この時はすごい勉強でした。
会社員時代の広告デザイン
嵐山光三郎と一緒にデザインした絵本
その後独立し、作家村上春樹との仕事で活躍しました。
村上春樹は、水丸さんを”ソウルブラザー”のような人といっています。
エッセイ、紀行文のイラストも味があり、温かみを感じます。
特に私は、絵本と描き文字に強く魅かれました。
”うまく書こうなんて思うと描けない。
いつも意識しないでパッと書きますね。”
頑張らないと描けなのなら、まだ勉強不足ともいっています。
遊びと仕事を大切にし、普段からいろんな人をみて観察していたいたようです。
だから、キュートさも伝わるのですね。
広告デザインも惹きつけられます。
漫画の広告も楽しいです。
”ぼくがやっているイラストレーションは「絵」じゃないんですよ。
小さな頃から絵は好きだったけど、それは自分の気持ち、感情や思ったことを視覚的に表現したかったから。
「絵」は依頼してくれた人の気持ちを自分の中でかみ砕いてビジュアライズしているという感じなんです。”
1984年から開催していた個展の作品も、やさしくほほえましいです。
左に描かれているスノードームは、趣味で集めていたそうです。
”うまい絵を描く人は世の中に腐るほどいますからね。
ルーブル美術館で30分も過ごせば、ミケランジェロもいれば、ラファエロもいる。
うまい絵を描くだけが勝負なら、たいていの人は絵なんて描けなくなりますよ。
でもそういうことではないと思うのです。
魅力のある絵というのはうまいだけではなく、やはりその人にしか描けない絵なんじゃないでしょうか。
だから、そういうものを描いていきたいなと思います。”
今回の個展で、作品を鑑賞しながら、プロとしての厳しさも教えられたような気がします。
技術も大切ですが、どんどん仕事して、遊んで、感じて、人間を磨いていく。
その人にしか描けない絵というのは、そういう魅力があることだと思いました。
素晴らしい作品、ありがとうございました。